Everything in Its Right Place(SUB3.5 or DIE)

マラソン(PB3:36:04)、バンド(ベース担当)、海外独り旅(現在26ヵ国)、酒(ビール、ワイン、ウイスキー)、釣り(最近ご無沙汰)をこよなく愛する後期中年者の日常。

かすみがうらマラソン2022

登山のオフシーズンの体力維持にと本格的にランニングを始めたのが2020年10月。

以降、登山よりもランニングの方が面白くなってしまい、山には一切行かず(登山とは実に短い趣味だった)、あれ程好きだった釣りに行く回数もどんどんと減り、走ることに夢中になっていたら、月間走行距離が250kmを下回ることがなくなっていた。

力試しにフルマラソンに挑戦しようと2021年10月の松本マラソンにエントリーするも、コロナで中止。

2021年11月の黒部名水マラソンも中止。

2022年2月の湘南国際マラソンも中止。

 

4度目の正直となったかすみがうらマラソンで、いよいよフルマラソンデビューを果たせることとなった。

3日前に誕生日を迎えたばかりだし、メモリアルな初マラソンにしなくては。

 

2月の湘南国際マラソンでは、キロ6分ペースの4時間13分を目標に掲げていたのだが、練習期間が延びたことで走力が上積み出来たと前向きに捉えて、いっちょデビュー戦でのサブ4やったるか、と、4時間切りを目指すことにした。

何しろ残りの私の人生で、一番若いのは今なのだ。

イケル時にはイクべきだ。


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土浦の鄙びたホテルに前泊、翌日の準備を抜かりなく。

 

カーボローディングをやり過ぎて、そこそこ酷い下痢を発症したものの、正露丸を用量の2倍服用し、朝ホテルで3回、スタート地点近くのコンビニでも用を足し、なんとか便意は治まった。

 

スタート時の気温は10度、天気は晴れ。

風も弱く、まずまずのコンディションと言えそうだ。

 

混雑回避のために5分おきのウェーブスタートを採用した本レース、私の属する第2ウェーブは9:50スタート。

集団の真ん中あたりで待機するが、号砲が鳴ってもなかなか集団は動き出さない。

 

ようやくスタートゲートを通過したのは、号砲の1分半程後だった。

しかし、人混みが凄くて走るというより早歩きのようなペースが暫く続く。

 

1km過ぎで左に曲がると早くも最初の難所、急な上り坂の橋を渡る。

橋の道幅はそれまでの道路よりも狭くなっており、再び大渋滞。

ここで人を縫うようにジグザグに走ったのが悪かったのか、いきなり左右の脛が疼き始めた。

まずいな。

いやな予感は現実のものとなり、3km地点で両方の脛がパンパンに張って激痛が。悪癖の前脛骨筋痛が、よりによって両脚同時に発症する最悪の事態で、テンション激落ちである。

脛が痛むと足首の柔軟性も下がり足音が大きくなるので、ペースを落とさざるをえない。

こんな序盤でレースプランが崩壊するとは思いもよらなかったけど、これは序盤に突っ込むなというマラソンの神のメッセージなのだと思うようにして切り替える。痛みに耐えて走り続けていれば5,6kmで痛みは治まるはずだ。

しかしながらこの日の前脛骨筋痛は執拗で、痛みが無くなったのは14km過ぎだった。

 

ここで一気に遅れを取り戻そうとするのは危険なので、5分30秒前後の当初の想定ペースを維持する。

 

中間点を通過した時、手元のランニングウォッチでは2時間ジャスト、前半で2~3分の貯金をするプランは失敗したけど、アクシデントがあった割にはなんとか上手く纏めたとも言える。前向きに前向きに。

 

30km通過。

私の人生最長ランニングは30kmなので、ここからは未知の領域だが、心肺も体力もまだ余裕がある。いけるぜ、42.195km!フルマラソン恐るるに足らず!

 

しかし何が起こるかわからないのが長丁場のレース、34km手前で誰かに後ろから膝カックンをされたかのように、突然右膝がガクッと崩れ、つんのめって手をついた。何だ?何が起こった?

エイド以外で初めて止まり、膝の屈伸を数回。右膝に力が入らない。

様子を見るように少しペースを落として走りだす。

いつまた膝が崩れるかもしれないという恐怖、恐る恐るという走りで34kmから35kmのラップが5分50秒まで落ちた。

さすがにこれは遅過ぎる、次のラップは頑張って5分40秒まで戻す。

しかし、無意識に右膝を庇うような走りになっていたようで、異変は左臀部に起こりつつあったのだった。

 

激痛。

37km過ぎで、左臀部の違和感は激痛に変わった。

くそ、あとたったの5kmなのに、尻が痛くて脚が上がらない。

もう右膝なんか庇ってられない。左脚が前に出ない分、右脚で強引に引っ掻くように走る。

身体は傾き、左右の歩幅も違うみすぼらしい走りだけど、必死にもがくように走る。

don't walk, run!


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(ラスト7kmのスプリット、あの苦しさが甦る)

 

痛みに耐えながら必死の瀕死の走りを続けていると、ゴールゲートが見えてきた。

埋め込まれた電光掲示板のストップウォッチは、今まさに4時間に到達したところだった。

私は、アラン・シリトーの小説の主人公のように、ここで走るのを止めようかと一瞬考えたが、考えているうちによろけるようにしてゴールゲートをくぐったのだった。
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