ワインバーを出ると、サマーな後輩(仮名)は一切の迷いの無い足取りで進路を東にとった。
つまりこれは駅とはまるで反対方向に向かっているということなのだが、私に異論を挟む権利は与えられていないようだった。
大通りを渡ると、東十条銀座なる商店街が唐突に現れた。ローカルエリアの中のローカルエリア、こんなところにまでアンテナを張っているとは弊社のビブグルマン恐るべしである。
机上の空論。
この店名に込められた意味を、私はどのように受け止めればいいのだろうか?
いずれにせよ、ラーメン店ではある。
狭小の店は空席がひとつしかなかったが、弊社のビブグルマンが券売機に札を投入した瞬間に、座席が2つ並んで空いたのだった。
恐るべし、ビブグルマンの神通力。
記憶が曖昧なのだが、どうやら私は肉中華そばとビールを頼んだらしい。
記憶が曖昧なのだが、淡麗系ではなく、しっかりとした醤油スープだったようだ。
しかし麺の記憶もチャーシューの記憶もまるでない。
それはこのラーメンが凡庸ということではなく、ラーメンをしっかりと味わい、その味を記憶するにはいささか私が酔いすぎていたことによる。
今、私がラーメンを食べる頻度はせいぜい月に2、3回なのである。
故に一杯一杯を大切にしているというのに、記憶に残らない食べ方をするなんて、なんともったいないことをしてしまったのだろう。
サマーな後輩(仮名)のバカバカバカバカ!
まあ、彼についていった私こそが大馬鹿者である。
惰性で食べることは食事に対する冒涜だと最近の私は見なしているのだ。
いや、惰性というものはすべからく悪だ。
この手の下らない食事は、私の人生から排除したい。
という訳で、締めのラーメンには私を誘わないで下さいね、サマーな後輩(仮名)や私と飲む機会のある人達は。
なんてったってボク、誘惑には弱いですから。