絶好の釣り日和の冬晴れの日曜日だったが、私は仲間と一緒に窓の無い密閉された暗室に籠る。
レコーディング2回目。
この日のノルマは3曲。
持ち込んだ楽器は私のメイン楽器であるFenderジャズベースではなく、セカンドメインのMUSICMANスティングレイでもなく、サードメインのFenderプレシジョンベースでもなく、最近手に入れたばかりのFender mexico製のムスタングベースだ。
小振りなボディに見合わぬなかなかの暴れん坊なのだけど、クセの強いミドルを上手くコントロール出来ると、とても良い仕事をする。なによりショートスケールで弾きやすく、この日の課題曲にはコード弾き多用の難曲が含まれていたので、まさにこの曲の録音の為に購入したという側面もあるのだ。
昔は不人気で、それこそ10数年前はビンテージものも二束三文で売られていたムスタングベース、最近では個体の絶対数の少なさから70年代半ば製造の個体ですら信じられない程価格が高騰しており、こんなことならあの時買っておけば良かったと、先に立たぬ後悔が強まる、それぐらい気に入っている新兵器だ。
蛇足だが、というかそもそもこのブログそのものが蛇足のようなものだが、今年はこのムスタング以外にもギブソンのサンダーバードを手に入れた。王道を外した2本のベースを手にして、ベースの多様性を楽しむことに完全に目覚めてしまった。
唯一無二の自分だけの音を追求することは求道者的でカッコいいけど、どうも私はそういったタイプではないようだ。
そして、各楽器の個性の違いを楽しみながらも、よく聴くとそこには通奏低音のような統一性も感じられる。
その通奏低音のような統一性こそが、私の影なのだろうと思う。
影を慕いて。
あと2回録音すれば、アルバムのマテリアルは揃う計算だ。
トラックダウンを経て、いよいよ来年初夏にはリリース出きるか?
ますます釣りが遠ざかる。