Everything in Its Right Place(SUB3.5 or DIE)

マラソン(PB3:36:04)、バンド(ベース担当)、海外独り旅(現在26ヵ国)、酒(ビール、ワイン、ウイスキー)、釣り(最近ご無沙汰)をこよなく愛する後期中年者の日常。

HELLO, GOODBYE~ベース購入と売却

ちょっと遅めの自らへのバースデー・プレゼントに、少々、いや、自らのスキルを考えれば大いに気合いの入ったベースを買ってしまった。


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2020年製、フェンダー・カスタムショップ・プレシジョンベース。

一見普通のプレベに見えるのだが...


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ヘッドデカールジャズベース。

つまり、プレベボディにジャズベネックというハイブリッドなベースなのである。

 

私は武骨なプレベサウンドが大好きで、実際にフェンダーアメリカンビンテージ・シリーズの57年式プレベ(97年製)を所有している。

しかし、ナット幅が44mmと私のメイン機のジャズベより約6mmも太いので、大変に弾きにくい。

特に最近作った曲では、コード弾きとアルペジオを多用するようになり、太いネックのプレイヤビリティの低さに、この数年は出番がほぼ無くなっているのが現状だ。

 

ところで1968年に、フェンダー社のプレシジョンベースは、ナット幅が細くなるモデルチェンジが施され、また私自身の生まれ年が1969年なので、なんとなくこの年代のネックの細いヴィンテージプレベをデジマート(楽器検索サイト)で定期パトロールをするのが習慣になっていた。

たまに見つかる68年と69年のプレベ、オリジナリティが高くて状態の良さそうなもので70万円を下回る個体はまずなく、指を咥えて眺めるのが関の山だ。

 

しかし、先日某有名ヴィンテージ楽器専門店で、ボディはリフィニッシュ&ザグリ埋め、ペグ、ブリッジ、ポット、ピックアップ等々ほぼ全てのパーツ換装、オリジナルはネックぐらいという凄まじいコンディションの1968年製プレベをみつけた。

価格は50万円を下回っており、頑張れば買えそうな価格帯だ。

仕事で渋谷に行った帰り、会社に戻るのに大回りして新大久保を経由して、試奏の為にその楽器屋に立ち寄った。

う~ん、笑っちゃうぐらいパキっとした音。プレベらしい図太さも、ヴィンテージらしい枯れ感も全くなく、やたらとハイが耳障り。アンプのイコライザーをいくらいじって(いる時点で既に駄目だが)も、求める音には到底ならず、唯一良かったのは68年まで採用されていたラッカー・フィニッシュ・ネックのやれた手触りぐらいなものだった。リフィニッシュとかペグ交換とかブリッジ交換とかなら個人的にはあまり気にしないのだけれど、ピックアップ交換したヴィンテージは駄目なのだということがよく分かった。

 

この試奏が刺激となり、ヴィンテージで良いのがなければ、フェンダーカスタムショップ(以下c/s)のリイシューものでいいものがないかと探していてみつけたのが、今回購入した機材だ。

いや、正確に言うならば、これ以前に候補が2本あったのだが、悩んでいるうちにいずれも売れてしまったのだ。事程左様に楽器とは一期一会だ。

そして悩んだ楽器が売れてしまう経験が続くと、次の行動は素早い。

 

さて冒頭に書いた通り、プレベボディのジャズべネックというハイブリッドのみならず、他にも面白いスペックが満載のこのベース。


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まずはブリッジがRSD(Research Special Division) High-Massブリッジという裏通しも可能なものが付いている。オリジナルより自重が重く、ボディとの接地面も大きいため、サステインが伸びそう。何より裏通し仕様は、私の男の1本、78年製スティングレイが採用しているスペックであり、個人的に心惹かれるものがある。裏通しの方がボディが鳴るという説は、眉唾物ですけどね。

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ちなみに私のメイン楽器のジャズベースも接地面の大きなBADASS型のBABICZブリッジに換装したら、LOWは引き締まり、サステインが明らかに増した。


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更にジョイント部のネックヒール加工で、ハイポジションがとても弾きやすい。

最近の楽曲でハイポジを多用する曲が何曲かあり、これも私には魅力的なスペックなのだった。

ちなみにネック裏はヘヴィレリックで塗装がほぼ剥がされており、スベスベ触感で気持ちが良い。


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3弦のストリングガイドも地味に有難い。テンション感が抜けやすい3弦は、ペグのブッシュへの巻き回数を、他の弦より1巻き多くするのが常だが、これなら無頓着に巻いても問題なさそう。

 

何より、ボディ材がスワンプ・アッシュというのも惹かれる。

アッシュボディのベースを所有するのは初めてだが、極薄ラッカーフィニッシュから透けて見えるアッシュ特有の綺麗な木目は惚れ惚れする。

 

ネックも木目の美しい柾目(クォーターソーン)で、眺めているだけでワイン1本空けられそうな楽器だ。

 

スペックのみならず出音も少し変わっており、最初に鳴らした時はアレ?っと思ったのだが、和音を弾いた途端に一発でヤられてしまった。そのあたりは来週のスタジオで存分に鳴らしてから、改めてインプレッションを記したい。

 

オリジナル原理主義者たちは顔をしかめそうな、眉をひそめそうなスペック故か、新品同様のフェンダーc/s製のベースとしては割りと安かったけど(ワンオフ感は私にとってはむしろプラスだ)、絶対的に高いことに変わりはなく、私は購入資金捻出の為に2本のベースを下取りに出した。


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まずは先に述べたフェンダーアメリカンビンテージ・プレシジョンベース。

嗚呼、これもオリジナルのアノダイズドゴールドのピックガードの手触りが気に入らなくて、わざわざオリジナルでピックガードを作ったんだよな。

そしてこの楽器のヤンチャな重低音に対応すべく組んだのが、今のエフェクター・ボードである。今現在の私のベースサウンドの原点を作ったのは、間違いなくこのベースだ。


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そして、当時清水の舞台から飛び降りる覚悟で大枚をはたき、長らく私のメインベースに君臨していた男の1本、ミュージックマン・スティングレイ1978年。

アーニーボール社に買収される前のいわゆるプレ・アーニー期のオリジナル・スティングレイ、歴史的価値としては今回買ったベースとは比較にならないほど高く、出来ることなら売りたくはなかった。

しかし私はコレクターではない。

弾かないベースは手元に置くべきでないし、最近とみにタマ数激減のオリジナル・スティングレイ、探している人は少なくないはずで、ちゃんと弾いてくれる人に嫁いだ方が楽器も幸せだろう。私はアクティブ・ベースはもう自分のバンドでは使わないことに決めたのだ。


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アーニーボールの表記のないヘッドデカール、これがなんとも可愛いんだよなぁ。

いやー、別れがツラいわ。

 

好い人に買われてくれよ!

私に子供はいないが、これが娘を嫁にやる父親の心境なのではないかと、擬似体験をした。

あまりにも切なすぎる。