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謎のアジア納豆~追記


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そう言えば、この本を読んで、昨年来の疑問のようなモヤモヤが晴れたので追記しておく。

 

ネパール納豆の章で、地元の女の子が「カースト」という発言をして、高野氏が驚くシーンが出てくる。

引用すると、

「彼女もマガル族?」と訊くと、「ううん、グルン族。でも私たちは近いカーストよ」と答えるのでギョッとしてしまった。

 

高野氏は続ける。

ヒンドゥーの本家インドではヒンドゥー教が国教だったことはなく、公式には「カーストは存在しない」ことになっているが、ネパールは2006年まで世界で唯一ヒンドゥー教を国教と定めており、今でもカースト制度は目に見える形で残っている、と。

即ち、ネパールでは日本人の苗字にあたる部分がカースト名であり、異教徒や少数民族は宗教名や民族名がカーストにあたるのだそうだ。

 

ヒンドゥー・カルチャーは旅人である私にはとてもエキサイティングだが、そこで生きるにはなかなか大変そうである。

そして我々(というのはDDVセンパイ(仮名)と私だ)がトレッキングのガイドとして雇ったプロビン君が、時折発した「カースト」という言葉の意味合いが、これでようやく分かった。

 

トレッキング・ツアーの最終日に泊まったガンドラックという村で、彼は我々をオールド・グルン・ミュージアム、つまりグルン族の昔の生活様式を垣間見られる博物館に連れていってくれた。そればかりか、自身のポケットマネーを叩いて、我々(というのはDDVセンパイ(仮名)と私だ)に無理矢理グルン族の伝統的な衣装を着せて記念撮影までしたのだった。


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グルン族というのは山岳地帯に住む少数民族であり、仏教徒だ。

「父さんたちには是非この衣装を着て貰いたかったんだ。グルンは僕のカーストだからね。」とその時彼は言ったのだ。センシティブな話題だと思って突っ込めなかったけど、それはtribeという意味でのカーストだったのだ。

ちなみに彼の両親は我々と同い年ということが判明してから、彼は我々(というのはDDVセンパイ(仮名)と私だ)をmy fatherと、我々(というのは勿論DDVセンパイ(仮名)と私だ)は彼をmy sonとふざけて呼び合っていたのだった。

 

その夜トレッキング最後の夜ということで、プロビン君とシェルパ高橋慶彦さん(仮名)と我々(というのはDDVセンパイと私だ)は割と長い時間山小屋の食堂で酌み交わしたのだが(体調が優れないとのことでプロビン君はアルコールは飲まなかったが)、その時にも彼は、「自分と高橋慶彦さんとはカーストが違う。言葉も違う。ネパール語が僕らの共通語」と言っていた。

その後ネパールの労働問題へと話は発展したのだが、ここでは割愛する。

 

こうして文章化していると色んな場面が甦る。

昼夜問わずビールを飲みまくる我々に呆れたプロビン君が、「これはビールじゃない。バーリー(麦)・ジュースだ」と言っていたのを思い出した。

昼飯に寄った山小屋でビールを飲みまくる我々を、遅れて山小屋にやってきたドイツ人軍団に「彼等が飲んでいるのはバーリー・ジュースだよ」と釈明して笑われたのも可笑しかったな。

 

更に思い出した。

彼自身は仏教徒だが、ヒンドゥー教が国教のネパールに生まれ育ったので、宗教的な縛りはないものの、牛肉は一切食べない。

しかし、マレーシアに留学していた折、それとは知らずに牛肉を食べてしまって、神の逆鱗に触れるのではないかとパニックになったそうだ。

泣きながらネパールのお父さん(勿論我々のことではない)に電話して、どうしよう?どうしよう?と相談したら、お父さんは「旨かったか?」と逆に訊いたそうだ。プロビン君は旨かった、と答えたら、お父さんは一言「お前が旨かったのなら何の問題もない」。

その言葉に彼は救われ、そんなお父さんのことをとても尊敬しているそうだ。

いい話だ。

ちなみにそれ以降も一切牛肉を食べていないという。

 

コロナが収まったら行きたいところは沢山ある。

勿論ネパールもそのひとつだ。

高野本のお陰で、すっかり忘れていたネパールのエピソードを色々思い出してしまった。


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本邦初公開、グルン族の民族衣装を無理矢理着せられた我々。向かって右からガイドのプロビン君、私、DDVセンパイ(仮名)、シェルパ高橋慶彦さん(仮名)。ちなみに時に「荷物持ち」の意味でも使われるシェルパも、本来は山岳民族の名前である。

 

あー、懐かしいな、行きたいな、彼等に会いたいな!