巌哲初夏の限定メニュー、山。
冷静に振り返ると、私はこのメニューを食べたことがなく、そして巌哲に来年の夏はやってこない。
つまり、このチャンスを逃すと、私は永遠に山を食べることが出来ないのだった。
クソみたいな事故対応に心底うんざりして飲みに行きたい気分だったが、今日だけは酒よりも山を選ぶべきであり、私は定時前に会社を飛び出して早稲田へ向かった。
開店10分前に到着したにも関わらず、既に15名程が行列を形成しており、ファーストロットは逃した。
それでも金曜日の創作つけ麺提供日よりは若干回転が速く、18時半頃に入店。
夜の部はハートランドが欠かせない。
缶でもなく、生でもなく、瓶ビールこそがラーメン店に於ける最適解なのだと私は信じている。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
山、麺量250g。
ご覧の通り丼全面を覆うとろろ。山とは山かけの山ですね。
先ずは黄身をクラッシュしないように気を付けながら麺を引きずり出す。
うめぇ。
うますぎる。
トロロの風味を損なわない、控えめなタレを纏った麺、物凄く旨い。
しまったな、日本酒も頼んでおくべきだった。
山かけに日本酒が合わないわけがないのだ。
3割程食べ進めたところで黄身をクラッシュ、そしてまぜまぜ。
旨い!
コクと風味が増して、凄まじい旨さである。
こんなの食べたことない。そもそも発想が凄い!
麺完食後はスープ割ならぬご飯割。
これを残ったとろろに投入して、まぜまぜして頂きます。
とろろの一滴、ご飯の一粒も残さずにごちそうさま。
私は、11ヶ月も前に閉店を宣言してくれた強面の店主に深く感謝した。
閉店の事実を知らなければ、私はこの偉大な発明と言える山を、永遠に味わうことは出来なかったのだ。
店を出ると、実に21人もの行列が形成されていて驚いた。
私は食事をする為に並ばないという基本姿勢で生きているが、この日行列を成している人々はモノの価値を理解することの出来る優れた人間なのだと好意的に受け取った。