今夜こそ鮒寿司を食べようと、食べログを駆使して見つけた人気の割烹に開店時間に合わせて突撃するも、入口の扉には「本日予約で満席」との無情な貼り紙、店内を見ることなく撃沈。
バックアッププランで見つけておいた居酒屋へ向かうも、こちらは臨時休業。
ついてないぜ。
結局前日と同じ霊仙山に登り、前夜と同じ魚市で夕食という、ある意味で執拗なチョイスとなった。
前日は開店直後の17時という早い時間だったので客は私しかいないのかと思ったのだが、この日は日曜日の18時過ぎという夕食時にも関わらず、客は私しかいなかった。
後から誰かが入ってくることもなく、2日とも完全な貸切状態だったのである。
「昨日はうろりだったから」と何故かはにかむように大将がホタルイカのお通しを出してくれる。
オススメ下さいとお願いして出てきたのが小鮎の甘露煮。
そしてだし巻き卵。
東京だと当たり前のおろし醤油はついて来ずに、そのまま頂くのが彦根風のようだ。
しっかりと味がついていて旨い。
これは外せない、小鮎の天ぷら。
ビールよりも日本酒が合うので、昨日気に入った地酒、琵琶の舞を頂きます。
「これはそんなにオススメじゃないんだけど...」と意味不明な謙遜と共に大将が出してくれたのは、うなぎの肝。
や、これは相当旨いですよ。
琵琶の舞をお代わりしてすっかり良い気持ち。
地酒とは家で飲むのではなく、地の料理に合わせてその土地で飲むのが最高に良い。
しかし、初めて来たような気がしない、くつろげる良い店だ。
大将は産まれも育ちも彦根だという。
寿司の修行は大阪と東京で積んだそうだが、都会、特に東京には馴染めなかったとのこと。
つまりは身も心も地元にしっかりと根を張った、とても良い店なのだ。
しかし、何故他に客がいないのだろうか?
一方で電話はちょくちょく鳴っており、もしかしたら出前の需要が多いのかもしれない。
登山の余韻に浸りながら地元の旨い食材と酒に癒され、とても幸せな気分。
お会計を頼むと、大将は「おおきに」。
うーん、なんともいいもんだなぁ、本場の「おおきに」は。
と同時に、新宮の東宝茶屋にまた行きたくなってしまった。
東宝茶屋の大将も、「おおきに」と言っていたのだ。
海外に行けないが故に、2020年は日本再発見の年となっている。
出張のついでを除けば、国内一人旅は信濃大町の管理釣場以来、10年以上ぶりだが、これが思いの外楽しい。
これらの体験も、コロナ禍がもたらせた数少ないプラスの側面だろう。