積ん読の山から取り出したるは、「みんなバーに帰る」。
どういう経緯で入手したのか全く覚えていないのだが、駄目人間が多数登場する馬鹿馬鹿しい小説との触れ込みだったので、馬鹿馬鹿しい小説を読みたくなる気分になるまで放置していたのだ。
会社の馬鹿馬鹿しさに辟易し、むしろそのあまりの馬鹿馬鹿しさに、むしろ私が何とかしなければならないのではないかという義憤に駆られている今、まさに読み時なのかもしれなかった。
「君」と呼ばれる主人公、つまりは二人称で書かれた文体だ。
一人称小説だと語り手が主人公、三人称小説だと語り手は神の視点、二人称だとこれはどういう距離感なのだろう?語り手は常に「君」に寄り添っているので、守護霊か背後霊のような感じだろうか?
かつて読んだ絲山秋子の小説に二人称のものがあったと思うのだが、どちらの小説も物語の世界に入り込むのに時間がかかったような気がする。
苦笑と失笑の連続。
しかし全編を貫くのは猛烈なペーソスだ。
デカダンス小説であり、ロードムービーであり、ノアールでもあり、しかし最後は天啓受け取った。
「油断していると、仕事は人間の頭を狂わせるんだ」という最後の「君」の独り言は、私の心の奥深くに刺さりましたよ。