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俺たちの暴走~MIX編

三連休初日、日本列島に巨大台風が接近中。

しかし、この日は朝10時から8時間レコーディングスタジオに籠る予定なので、雨が降ろうが風が吹こうが関係ないのである。

 

取りこぼした、いや録りこぼしたギターパートと歌入れを午前中に終えて、午後からはいよいよトラックダウン、すなわちミックス作業に入っていった。

 

本日のノルマは3曲。

この3曲の作詞作曲者である我々のリーダーの難解な指示書を元に、先ずはエンジニアがベーシックトラックを作る。

 

その待ち時間を有効利用すべく、私は近くの鍼灸院に飛び込み、わっかない平和マラソン後に痛みが続く左脚の施術を受けた。

中年パンクロッカーには、最早無駄に出来る時間などなく、効率が求められる。

 

さて、一旦完成したベーシックを聴いて驚いた。

エンジニア氏が、予想の斜め上から攻めてきたからである。

 

自分たちのバンドのレコーディングが初めてならば、トラックダウンも初めてなので、これが普通なのかもしれないが、音の雰囲気がラフミックスとはガラリと変わっており、全体的には荒々しくザラッとした感触がありつつも、哀愁がハンパなくすごい。

音の分離具合や位相、奥行きなど、抽象的な指示が見事に具現化されている。

 

既にこの時点で7割がた仕上がっていた印象だ。

 

ここから皆の意見を纏めて微調整を繰り返し、予定より30分以上早く、全ての作業が終了した。

特に最後に作業した3曲目は、エンジニアのベーシックトラックでほぼ一発OKの奇跡、多分我々とエンジニアの理解が猛烈に噛み合ってきたのだろう。

 

残り9曲はこの分なら立ち会う必要はなく、エンジニアにお任せし、微調整をメールでやり取りしたら済みそうである。

という訳で、指示書は既に全曲分渡してあるので、9曲分のミックス代金を支払ってスタジオを後にした。

 

打ち上げのビールは達成感の味がして、やけに旨かった。


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帰宅して、エンジニアに送って貰った音源データをPCにダウンロードして聴き直す。

イヤホンで聴くと、スタジオではキャッチ出来なかった細部も聴き取れる。

地獄のような世界観と音像、明日なき疾走感、猛烈なカタルシス

 

作業開始から足掛け1年、いや、正確には既に13ヶ月が経過、遂にゴールが見えてきた。

 

最早CD等のフィジカルは風前の灯火で、デジタル配信が主流となった現代、音楽の価値が随分と安くなってしまった。

一方でDTMソフトも高機能化、低価格化が進み、音楽を作ることも自体も相当に安くなったようだ。

我々の作っている全12曲、約55分尺のフルアルバムの制作費は、エンジニアの人件費込みで20万円でお釣りが来る。

もしCDをプレスするなら(多分する)、付属品とプレス代は別にかかるとは言え、「作品」(と言えるクオリティかどうかは一先ず置いといて)を残すための価格としては、異様に安いのではなかろうか?

バンドという形態がコンテンポラリーなカルチャーではなくなってしまった代わりに、我々のような地下を這い蠢くアマチュアバンドにとっては、活動がしやすい社会になっている気がする。

 

いいんだか、わるいんだか。