秘湯。
まさに秘湯である。
カーナビが峠道で「目的地に近づきました」と案内を終えたのは、何もない山の中。
私の目指す旅館は幻で、パラレルワールドに迷い込んでしまったのではないだろうかと不安になってきた頃に、それは唐突に現れた。
中の湯温泉旅館。
鄙びた温泉宿を想像していたのだが、建物は綺麗かつ大きい。
部屋からの眺めがこれだ。
まるでネパールの山小屋のよう。
先ずは源泉掛け流しを謳う大浴場でひとっ風呂。
少しぬめりのある泉質で気持ちがいい。
大自然の中の殊更開放的な露天風呂も最高だ。
さて、お楽しみの夕食はこんなメニュー。
ジャーン。豪華絢爛。
地酒呑み比べセットを頂きます。
流石信州蕎麦処。
ちなみにこれは2日目のメニュー。
前夜と全く異なるメニュー構成に、ホスピタリティを感じる。
朝食までもが初日と2日目で異なっていたのは驚きだ。
さて、翌朝は8時半に宿のマイクロバスで上高地バスターミナルまで送ってくれる。
帰りは中の湯バス停まで乗合バスで戻り、バス停前にある温泉旅館の売店から迎えを頼むという方式。
中の湯バス停は、かの有名な釜トンネルを抜けた何もないところにある。
ここにポツンと佇む中の湯温泉旅館の売店小屋。
ピックアップをスタッフに頼むと、緑茶と和菓子を出してくれた。
15分程で私1人を迎えにワンボックスがやって来た。
この手間隙、このホスピタリティ、1泊1万7000円以上もするので流石人気観光地の宿は高いなと思っていたのだが、クォリティ、ホスピタリティを考えるに、値段に見合った、いや、むしろ安いぐらいの宿だと考えを改めた。
翌朝チェックアウトの時に、老舗と聞いていたけど随分綺麗な宿ですね、と尋ねると、中部縦貫自動車道の安房トンネル建設時の水蒸気爆発事故の為に移転を余儀なくされ、20年前に安房峠の途中にあるこの辺鄙な場所に移ってきたのだそうだ。創業は実に100年以上も前だという。
そうか、それでこんな不便なロケーションなのかと納得。
ますます応援したい気持ちになる。
上高地再訪の機会あらば、是非またお世話になりたい。そんな素敵な宿だった。