Everything in Its Right Place(SUB3.5 or DIE)

マラソン(PB3:36:04)、バンド(ベース担当)、海外独り旅(現在26ヵ国)、酒(ビール、ワイン、ウイスキー)、釣り(最近ご無沙汰)をこよなく愛する後期中年者の日常。

龍朋(神楽坂)

パン屋再襲撃」という村上春樹の短編小説がある。

夜中に理不尽な空腹感に襲われた夫婦、妻がこれはかつて貧乏時代に夫婦で襲ったパン屋の呪いに違いないと言う。

「もう一度パン屋を襲うのよ。それも今すぐにね。」

それは夜中のことだったので開いているパン屋はなく、主人公夫妻は終夜営業のマクドナルドを代替的に襲ったのだが、強奪したビッグマックを食べて無事に呪いは解け、めでたしめでたし、という変わった小説だ。

 

何故唐突にこの小説を思い出したのかと言うと、その日私はなぜだか朝から餡掛け焼きそばが食べたくて仕方がなく、まるで何かの呪いのようだなと、ふと思ったからだ。


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呪いを解く為に訪れたるは神楽坂の龍朋。

オーダーは勿論焼きそばである。

 

2口3口で呪いはすっかり解けて、残りは単調で濃いめな味に辟易し始めた。

卓上の酢とカラシで適宜味変しながら完食。

 

しかし周りの客のチャーハンが旨そうで、今度はチャーハンの呪いがかかってしまったかもしれない。

呪いを解く為には近々再訪して、チャーハンを食べるしかないのだ。

 

龍朋再襲撃は近い。

 

ところでこの「パン屋再襲撃」に収められいる「ファミリーアフェア」という小説は、我が人生で最も読み返した小説である。

少なくとも100回は読んでいる。

通読に限定しなければ、つまり部分的には間違いなく200回以上は読んでいるだろう。

この小説の何がここまで自分を魅了するのかわからなくて、お気に入りの玩具を分解する子供のような心境で、単語ひとつひとつを点検するかのように読みといたのだ。

 

最後に読んだのって多分15年以上前だよな。

久し振りに読み返そうと本棚を見ると、パン屋再襲撃はおろか、村上春樹の著書が一冊もなかった。我ながら唖然とした。

景気よく断捨離しすぎちゃったかな?

 

まぁいい、過去は過去だ。前だけを向いて生きていこう。