霊仙山。
りょうぜんざん、と読みます。
7月に行き掛かり的な事情で鳥取県の大山に登ったので、なんとなく次に登る山について考えていた。
虫も嫌い、泥も嫌い、ジョグでも特に坂道が苦手な私が、何故次に登る山について考えなくてはならないのか、自分でもよく分からなかったが、恐らくはコロナウイルスのせいだろう。それとネパールへの追憶だ。
そういえば、私は新幹線の車窓からの景色で、岐阜羽島を過ぎた辺りから突如拡がる寂寞感のある景色と、その中に控えめに聳える伊吹山が大好きなのだと思い当たった。
そうだ、伊吹山に登ろう。
しかし、我々が決して自分の顔を見ることが出来ないように、伊吹山に登ると伊吹山を見ることが出来ない。
少し調べると、伊吹山の南側に霊仙山という山頂が360度の大パノラマで、琵琶湖も伊吹山も見えるという理想的な山が見つかった。
先ずは霊仙山に登って山頂から伊吹山を拝み、翌日に伊吹山に登ろう。
完璧だ。完璧なプランだ。
霊仙山に駐車場はなく、麓の醒ヶ井養鱒場の駐車場に車をとめる。
ここから登山口までは3.4km程離れており、ウォーミングアップ的に林道をひたすら登る。
登山口到着。既に汗だく。
いきなり深い林。
登山道は整備されておらず、剥き出しの自然である。
沢を登る。
誰も歩いていない。深い山の中に独りでいると、森の熊さんとばったり出会ってしまいそうで心細い。
聞こえるのは私の足音、私の息づかい、私のデイバッグにぶら下げた熊避けの鈴の音、そして鳥の鳴き声のみ。
五合目付近から霧が出てきて、更に心細さが増す。
突如目の前を巨大な物体が凄い速さで横切り、マジでビビる。
ん?
正体は鹿だった。
霧は更に深まり、予報に反して雨まで降りだした。
大山登山の前に購入したDDVセンパイ(仮名)のイチオシ、モンベルのストームクルーザーを羽織る。
雨は一切通さないのに、中は全く蒸れない機能性の高さに軽く驚く。
8合目には鳥居。
濃霧で9合目付近で完全に道に迷ってしまった。
スマホにダウンロードした地図アプリだけが頼りだ。
9合目は経塚山山頂。
ここから一旦下って、隣のピークを目指す。
着いたー!
しかし、360度のパノラマは、360度の白い霧。達成感が低い。
そういえば大山山頂も濃霧で何も見えず、どうやら私は山との相性が悪そうである。
雨のせいで泥濘と化した登山道を下るのは苦行だった。
なんで山なんかに登ってしまったのだろうか?
しかし登った以上は下らない限り下界には戻れないのだ。