16時過ぎにホテルニューパレスにチェックイン、16時半のオープンと同時に一番風呂へ。
まるで銭湯のような広さの清潔な風呂、気分爽快である。
18時前には早くも夕食タイム、狙いを定めていた東宝茶屋へ。
中の様子が窺い知れずに怯みかかったけど、エイヤッと扉を開けるカウンターにお一人様、テーブル席に2人、店主と女将がにこやかに迎えてくれた。
瓶ビールはキリンラガーの大瓶。
お通しは玉子豆腐。
いいですね。
南紀に来たのだからどうしても食べたかった、クジラとイルカの盛合せ。
クジラもミンククジラとゴンドウクジラの2種だ。
脂身は馬刺のたてがみの如く甘く、ベーコンは凝縮された旨味、これはたまりませんな。
驚いたのはイルカ、昔小田原で食べたイルカは硬くて臭みも気になったが、このイルカは臭みゼロ、そしてまたクジラ以上に甘い。
大将にイルカがこんなに旨いとは知らなかったと言うと、小さなイルカを厳選して仕入れていると、シーシェパードに抹殺されそうなことをニコニコとおっしゃる。
イルカは小さければ小さいほど旨いのだそうだ。
鮎のなれ寿司。
私がなれ寿司は初めてだと告げると、初心者向けの1ヶ月熟成というのを出してくれた。
ちなみに漢字で書くと「馴れ鮓」が正しいそうだ。
発酵食品だけに、チーズのようなヨーグルトのような酸味がありながら、鮎特有のスイカのような香りもちゃんとする。
これは絶品である。
ビールより日本酒に合いそうなので、太平洋という地酒を冷酒で。
うわー、予想以上に合うわ、これ。
もう最高を通り越してすっかりいい気持ち。
食文化を守ろう、などと大上段に構えて言うと、文化事業的というか、味は二の次三の次という感じになるけど、自然豊かな南紀でわざわざクジラやイルカを食べるのは、それらが旨いからに他ならない。
実際、ミンククジラが定置網に入って網が破壊されることもよくあるのだと大将は言う。
身近な存在なのだ。
ベジタリアンは余計な事を騒がずに、勝手にベジタリアンをやっていればいい。
草食動物は草を食み、肉食動物は狩りをする。
そして本来我々人間も、元は狩猟民族であったはずなのだ。
本質的に我々は、他者の命を奪わなくては生きることの出来ない存在だ。
生と死を考えながら酒を飲むというのも、熊野ならではかもしれない。
南紀再訪の機会あらば、私はまたクジラとイルカを食べるだろう。