購入してから3ヶ月以上が経過し、走行距離も1500kmを超えた新しい相棒、2009年式メルセデス・ベンツE320CDI。
かなり慣れてきたところで、改めてインプレッションなどを備忘録的に記しておこう。
やたらと軽く感じて馴染めなかったステアリングのフィール、アクセルを踏み込んだ際にレスが一瞬遅れるタイムラグ、高速では全く効かないのに中低速だとやたらと効くエンジンブレーキ、これらの違和感は単なる慣れの問題だったようで、全く気にならなくなってきた。
むしろ街乗りでは軽いけど高速走行だとビシッと収まるステアリングフィールは、慣れたら快適ですらある。
車幅や全長が一回り大きくなった車輌感覚にも慣れてきて、後は右ハンドル車での車庫入れにさえ慣れればもう完璧かな?
前進と比べてバックの感覚を掴むのは難易度が高く、車幅ギリギリの自宅マンションの立体駐車場へ入れる際には、今だ何度も切り返さなければならない状態であります。
ハイブリッド車全盛の時代に、11年落ちの中古車の燃費云々を喧伝するのも気が引けるのだが、街乗りで平均9~10km、高速走行だと1リットルあたり15km超を記録するなんて、V型6気筒3000ccのターボエンジンとしては相当に秀逸だ。
V6の3200ccだった以前の車に比べ燃費性能は1.5倍、以前はだいたい300km毎に給油していたのが、今や320km走行しても燃料計は1/3も減っていないのだ(これにはタンク容量が62Lから80Lへと大きくなっているという要因もあるが)。おまけにハイオク仕様からディーゼルに変わったことで燃料自体が2割も安くなり、この点に関しては良いことずくめ。
同じW211のV8、5000ccモデルをも凌ぐ狂ったトルクがもたらせる加速感と安定感、そしてそこに7速ATが組み合わせると、130km/hの巡行(なんて書いていいのか?)でもエンジンの回転数は僅かに2000rpm、余裕綽々で静かなものである。なにより低回転なので耳障りな高音がでず、エンジン音が実に耳に心地好い。
一応ベーシストの端くれである私は、なんてったって低音が好きなのである。
そして追い抜きにかかる時にアクセルを踏み込むと、まるでキャブ車のようなゴボッという音を放って急加速する。
こういう気持ちの良さは理屈じゃない。
良くできた実用車、とか、BMWに比べると走りがつまらない、とか、エンスージアスト達からは無難な車の代名詞のようにも扱われることの多いメルセデスだが、個人的にはこのディーゼル・エンジンは今まで私が所有した全ての車の中で間違いなく最高である。
おとなしい見た目の奥底に潜む狂気と凶暴性のギャップ萌え、今年から管理部門で働くことになった私にとって、もしかしたら生きる指針にも成りうる最適な車ではないのか?
例えネクタイを締めたとしても、俺は首輪で繋がれた犬にはならないぜ!ってね。
前のCLK320カブリオレは馴染みのメカニックが絶賛するほどアタリの車で、14年間消耗品の交換以外は全くの故障知らずだった。
おかげで勝手にメルセデスに対して壊れないイメージを持っていたのだが、メカニック氏いわく、壊れる個体は本当によく壊れるらしい。
そんな訳で信頼性に関してはまだ未知数だけど、W211生産終了の翌年に登録された本物の最終モデルだし、壊れにくいと信じたいところ。
なにしろ「最高か無か」を社是として標榜するメルセデス、モデルチェンジの度に最新技術を惜しみなく投入するので、それが仇となり初期モデルでは不具合やらリコールが頻発する傾向がある。
熟成した最終モデルこそが狙い目という意見も多いのは事実だ。
当初は購入価格やランニングコストの観点から、同じW211のガソリン車で2500ccクラスを狙っていたのだけど、最終的にディーゼルに絞って良かった。
わざわざ北海道から取り寄せた甲斐があった。
期待以上に走りが楽しい。
期待以上に経済性が高い(燃費以外は未知数)。
そして長距離移動が今まで以上に楽である。
世の中はエコカー方面へと進化し続け、ハイブリッドカーのみならず全体的にエンジンはダウンサイズ傾向、現行のE300なんて4気筒2000ccのダウンサイジングターボですからね。
確かにV6エンジンもラインナップはされているが、最早主力ではなく一部の物好きとかオールドスクールの為に、という印象。
デカいエンジン積んでビュンビュン走るおおらかな車が主力だった時代の遺物を買えるのは、もしかしたらこれがラストチャンスだったかもしれないのだ。
これでもしもボディカラーが前の車と同じグリーンで、もしもインテリアが前の車と同じベージュのレザーパッケージだったなら、例え屋根は開かずとも、私にとって完璧な車だったかもしれない。
馴染みの船宿のスタッフや顔見知りの常連さんは、私が車を変えたことを知ると一様に皆さん驚く。
そして気のせいかもしれないが、そこには非難めいたニュアンスを感じないでもない。
例えるならば、ペットを捨てた人を蔑んで見るような感覚だろうか。
かなり珍しい車だった上に13年半も乗っていたので、最早人馬一体を超えた、ある種の私の象徴ですらあったのだろう、確かに。
実際私も相当に愛着があり、昨年7月に車検を通した上にタイヤも履き替えたばかり、まだまだ乗るつもりでいたので、本当に手放したくはなかったのだが、事情が事情で仕方がなかったのである。
白い4ドアセダン。
トランクにはいかにもおぞましきゴルフバッグが入っていそうなスペックだ。
しかしこの中に入っているのは釣具とクーラーボックス、そして少しばかりの狂気と凶暴性なのである。
私はこの地味な見た目のおっさん仕様の車と走り続ける。
中身、すなわち運転席に座る私自身も立派なおっさんなのだ。
しかし車も中身もその内面には狂気と凶暴性を秘めているのである。
ナメてたら火傷するぜ!そこんとこヨロシク!
ま、いずれにせよ長く付き合っていこうぜ。
お互いに壊れない限りはね。
写真は千倉港にて、愛しの千鯛丸とツーショット。