ワインを作り、シードルも作るDDVセンパイ(仮名)と、そして酒ならなんでも好き、勿論ハードリカーの類いにも目のない私に、ガイドのプロビン君が是非とも飲んで欲しいと薦めてくれたリンゴのブランデー、マルファ。
ネパール最後の夜だからとこの強い酒をセンパイと二人ボトルを空にしたところ、翌朝私は激しい下痢を発症した。
それでもこの、ニュー・エベレスト・モモ・センターのホワイトソースがかかったモモだけは食べない訳にはいかないのである。
他に類をみない独特の旨さであるのみならず、一皿100ルピー(約100円)と、物価の安い(ビール除く)ネパールの中でも突出して安い。
嗚呼、今すぐにでもネパールにこのモモを食べに行きたい!
さて、エベレスト・モモ・センターを出たら、タクシーを捕まえて目指すはヒンズー寺院のパシュパティナートだ。
ここは是非ともDDVセンパイ(仮名)を連れて行きたかった場所なのだ。
シヴァ神を祀ったこの寺院自体はヒンズー教徒しか入ることを許されない。
しかし、この寺院の見処は寺院そのものではなく、川沿いの火葬場なのである。
輪廻転生を信じ、墓を作らないヒンズー教徒は遺骨と遺灰をガンジス川の支流であるこの川に流す。ネパール版のバラナシだ。
この煙は勿論遺体を荼毘にふしているところ。
死と向き合うことは、紛れもなくメメントモリ的な行為だ。
メメントモリ=死を忘れるな。
生きることと存在することは異なる。
主体的かつ創造的に生きようと、この煙を眺めながら強く思う。
奴隷のように生きたくない。
自分を他人と較べてはいけない。
我々は長いこと黙って煙を見つめていた。
いよいよ今夜のフライトで帰国だ。
旅の締めくくりがパシュパティナートというのも悪くない。
自然を満喫どころか自然と一体化し、死と向き合うことで生への決意を新たにした私に、帰国翌日から待ち受ける日常に、あの日常に、果たして耐えることが出来るのだろうか?
次の旅は今のところ全く計画していないが、恐らくそう遠くない将来のこととなりそうだ。
~ネパール放浪記・完~